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2026.08.04 610gym

「井上尚弥と何が何でもやりたいというのはない」

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プロボクシングの「Prime Video Boxing 16」(9月27日、トヨタアリーナ東京)の追加カードの世界戦2試合が3日、都内で発表され、IBF世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦では、元IBF世界バンタム級王者で同級1位の西田凌佑(29、六島)が同級2位のサム・グッドマン(27、豪州)と対戦する。この王座の正規王者は4団体統一王者の井上尚弥(33、大橋)で2階級制覇を成し遂げると挑戦権を得るが、陣営トップの枝川孝会長(61)は「何が何でもやりたいというのはない」「フェザー級でやりたい」との考えを明かした。

【映像】井上尚弥が親切丁寧に女の子に…

 井上拓真と那須川天心の再戦のアンダーカードにファン待望の好カードが決まった。昨年6月のWBC世界バンタム級王者の中谷潤人(MT)との統一戦で6回TKO負けしたものの、見せ場を作り、今年2月に階級をひとつ上げたIBF世界同級挑戦者決定戦でブライアン・メルカド・バスケス(メキシコ)に7回途中負傷判定勝ちした西田と、昨年1月に井上戦を目の負傷で2度キャンセルしたグッドマンの暫定世界戦だ。
 JBCは「正当な理由のある」暫定世界戦は認めており、井上が来年2月まで防衛予定がないため、この暫定世界戦が決定した。
 3つ揃いのスーツで会見に臨んだ西田は心に秘めた決意を表明した。
「復帰してから2戦目で世界暫定戦ですが、このタイトルを取れば、チャンピオンが返上したら自分が正規になりますし、しなくても正規チャンピオンと戦える可能性があると思っているので絶対取りたい。グッドマンは、結構バランスが良くて、どの距離でも戦えるという印象ですね。気持ちが結構強いなというイメージなので、自分も負けないようにしたい」
 グッドマンは一発の怖さはないが、昨年8月にWBA世界フェザー級王者のニック・ボール(英国)に挑み判定負けを喫したもののその猛攻に耐えたフィジカルとタフさがある。足を使ったカウンターボクシングが主体だが、打撃戦もできるトータルファイターだ。
「どの距離でも自分が上回れるように練習をやっている。相手の出方によってしっかりとポイントを取っていきたいという気持ちと、チャンスがあれば倒したいなというぐらいの、強い気持ちは持っている」
 枝川会長は「もしかしたら、とんでもないしょぼい試合になる可能性もゼロではない。もしくは打ち合いになるか。前に来てくれた方が好きやな。さばくのが特異。サバが突っ込んできたら、もう3枚にさばく(笑)」とのイメージを持つ。
 技術戦になれば西田が一枚上。ポールは終盤にサウスポーにスイッチしてグッドマンを追い詰めたが、サウスポーが苦手なのかもしれない。グッドマンは要所で前に出てくるだろうが、そこでの対応が勝敗のカギを握ることになるだろう。
 今回の暫定世界戦実現までに壮絶な舞台裏交渉があった。
 筆者の質問に声マネで返して会場をなごませた枝川会長が明かす。
 2月に西田が挑戦者決定戦を制し、グッドマンも4月の2位決定戦でロドリゴ・ルイス(アルゼンチン)に12回判定勝ちしたため、5月2日の井上と中谷の東京ドーム決戦が終わるとIBFから両陣営に暫定世界戦の交渉指令が届いた。交渉をスタートさせたが「向こうから無しのつぶてで何も返ってこなかった」という。グッドマンサイドは入札を希望。交渉期限内にまとまらず入札となった。
「何が何でもグッドマンサイドはオーストラリアで試合がしたいという思いやったんでしょうね。こっちでやったら西田に勝てないという考えがあったんじゃないか。でもこっちもオーストラリアでは勝つのは無理だと思っていた。この前の和田まどか選手の試合も、ローブローじゃないのに反則を取られて負けにさせられた。ああいうことが起こりうるわけやから怖かった」
 豪州の隣国ニュージーランドで行われた女子のWBA世界アトム級挑戦者決定戦で、和田まどか(DANGAN)が、どう見てもルール内のボディブローをローブローと判断され減点され1-2判定で負けにされた。日本ではクリーンすぎるほどクリーンな判定が下されるが、海外では露骨な地元判定がまかり通っている。絶対に入札で落とさねばならなかリサーチするとグッドマンは、昨年8月のボール戦で40万ドル(約6000万円)ものファイトマネーを手にしていることがわかった。これはサウジアラビアの「リヤドシーズン」マネーが投入された試合で、枝川会長は「ちょっと高すぎる、おかしいやろ」とも考えたが、その額を念頭に置いた上で、61万ドル(約9900万円)での入札を決めた。中堅ジムの六島ジムにすればとんでもない額だ。
 Amazonプライムビデオと契約している今回の興行のプロモーターである帝拳の本田明彦会長がサポートを約束してくれたことが大きかった。
「本田会長が、日本でやれるように取ってこい。どうにかしてやる、と言ってくださったんで、強い気持ちで臨めた」
 61万ドルという数字は六島ジムの「610(ムトウ)」にもかけた。枝川会長の本業は不動産業。これまで多くの入札を行ってきた経験も生きたという。
「ある程度、損益も計算した上でこれくらいでいけるやろうと弾き出した数字。低い金額で負けたら悔いが残るんで不動産の方式で入札したんですよ」
 西田には「落とせなかったらオーストラリアになるけどいいか」と確認を取り「大丈夫です」の返事をもらった上で勝負に出た。
 入札はオンラインで7月14日の深夜に行われた。
「ドキドキして見守った」結果、グッドマン陣営が提示した額は58万3500ドル(約9200万円)で、わずか700万円上回って興行権を得ることに成功した。
 枝川会長は、西田に電話をかけ「あかんかったわ」とドッキリを仕掛けた。
「そうですか」
 そう返した西田に「ウソや。勝ったわ」と種明かしをしたが、「ああ、そうですか」と同じような反応で「お前、寝てたんか?」と突っ込んだという。
 西田は「ホッとしました」とその時の気持ちを振り返った。枝川会長も「取ったら取ったで、うわあ、ごつい金額やなとぞっとした」という。
 ただグッドマン陣営は入札後になかなか正式な合意サインを返してこなかった。
「本当に日本に来るのかなという不安もあった」
 グッドマンは、2024年12月、2025年1月と決まっていた井上戦を目の負傷で2度もキャンセルした前科がある。
「良い人と良い人の対戦。カットや負傷がないことを願ってます」
 9月27日のゴングが鳴るまで安心はできない。

 グッドマン戦に勝てば魅力的な選択肢が広がる。正規王者の井上との統一戦、そして来年に再起を計画している中谷を挑戦として迎え討つリマッチだ。
 枝川会長は「昔の先輩の会長方に『ボクシングは次のこと考えたらあかん。まずはその試合だけを考えろ』と言われたんです。だからまだ分からない」とした上で、こう続けた。
「暫定王者になったら次はモンスター井上チャンピオンへの挑戦権があるわけですよね。ただ受けてくれるのかどうかという問題もあるじゃないですか。西田は井上チャンピオンとやりたいというのが夢ですから。もし向こうが『やるぞ』と言うたらやるよね。僕は『やめとけ』と思うんですけど。また負けたらやめるとかいうから…笑。ただ強いものとやりたいというのが彼の信条。受けてくれるならやります」
 ただ井上戦が現実的ではないことも理解している。
「別にこだわっていない。何が何でもやりたいというのはない。ネットの皆さんがもっと『ワー』とならない限りは、なかなかね。ならへんのちゃうかなと思うけどね。だってもうプランを色々作ってるわけでしょ」

井上は来年2月にサウジアラビアの「リヤドシーズン」が計画している日本大会で3階級制覇王者でWBA世界バンタム級王者のジェシー“バム”ロドリゲス(米国)とのビッグマッチを予定している。それを終えると、フェザー級挑戦にシフトする考えで、西田との団体内統一戦が割り込む余地はない。また厳格なIBFが王座の剥奪を指令してくることも、井上陣営は覚悟している。
 それらを踏まえて枝川会長は「個人的な希望」とした上で「モンスター井チャンピオンともしやるならフェザー級でやりたいです」とのプランを口にした。
 その方が可能性はある。だが、井上はフェザー級に転級した後は4団体統一を最優先にマッチメイクをしていくため、いずれにしろモンスター戦の実現には、枝川会長が言うようなSNSも含めた世論の待望論が必要になってくるだろう。
 そのためにもグッドマン戦でのインパクトが必要になってくる。
 枝川会長も「西田が完封するなり、KOの素晴らしい勝ち方をすれば、どうなるんかなと思うかも分からへん」という話をした。
 現実路線でいけば、バンタム級時代に果たせなかったベルトの統一という目標がある。西田も「このベルトを取ることに一番集中してますけど、取った後は前回統一戦でベルト取れなかったんで、その目標はあります」と明言した。
 枝川会長は、スーパーバンタム級に上がることで過酷な減量から解放された西田の進化に手応えを感じている。
「1番強いパンチをこれまでは打たなかったけれど、最近、勝手に打ち出した。倒せる可能性もあるんちゃうかな、強なったんやろうと俺は勝手に思ってるね」
 スパーでしか見せなかった幻のパンチ。
 西田も「サウスポーの(中谷には)リターンをもらう可能性があったんですが、オーソドックスが相手だと(そのパンチが)出る可能性はあります。仕留めるパンチではないんですが、自分の中で倒し方が、最近、分かってきている」と言う。
 まだ9キロは減量しなければならないが、これまでよりは負担が減り、怪我の懸念も減ったという。西田はスパーでの集中力を保てるようになったことを階級アップのプラス材料としてあげた。
 ただ仮想グッドマンのスパーリング相手に困窮している。
 同じ豪州の元WBO世界バンタム級王者のジェイソン・モロニー、タイプは似ている昨年12月にサウジアラビアで井上と対戦したアラン・ピカソ(メキシコ)に声をかけたが、いずれも10月にオーソドックスタイプとの試合が予定されていてサウスポーの西田とのスパーを断わられた。
 西田からは「フィジカルが強いタイプ」「足が使えるタイプ」の2種類のパートナーを要望されているが、適任者がいないため、会見で枝川会長は、同じ興行でWBC世界スーパーフライ級王座決定戦に臨む坪井智也(帝拳)に「アマチュアのいい選手を誰が紹介して」と公開で依頼したほどだった。
 ただ西田は「今やってるスパーの選手ともいい練習ができてるのであとはお任せしたい」と、現状の中でベストに仕上げることを覚悟している。
 現在は、カシミジムの藤野零大、山本愛翔、WBOアジアパシフィック・バンタム級のタイトル戦を控えている真正ジムの伊藤千飛らとスパーを行っている。

論スポです

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