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2024.07.16 610gym

日本人ボクサーが2人で合わせて破格の約5300万円をゲット!

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英大手プロモート会社マッチルームが楽天チケット、スポーツマネジメントNSNと組んで日本に初進出した賞金総額2億円のミドル級トーナメント「PRIZE FIGHTER」の1回戦4試合が15日、大阪府吹田市の大和アリーナで行われ、元OPBF東洋太平洋ミドル級王者の竹迫司登(33、ワールドスポーツ)が、6戦無敗だった新鋭のマーク・ディキンソン(25、英国)に3-0判定勝利。WBOアジアパシフィック&日本ミドル級王者の国本陸(27、六島)は可兒栄樹(22、T&T)に5回1分6秒にTKO勝ちし、準決勝に駒を進めた2人は、10月に幕張メッセで激突する。2人は15万ドル(約2370万円)というノンタイトル戦では破格のファイトマネーを手にし、国本はそこにプラスして約525万円のKO賞をゲットした。また1回戦の残り2試合はWBA15位のキエロン・コンウェイ(28、英国)、アーロン・マッケンナ(25、アイルランド)が共にTKO勝利した。

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会場はガラガラだった

 ミドル級賞金トーナメント1回戦のベストファイトだった。
 竹迫とディキンソンは最後まで激しく打ち合った。
 10ラウンド終了のゴングを聞いた竹迫は「すべてを出し切ったが、どっちが勝ったか正直わからなかった」という。
 読み上げられたジャッジペーパーは「96―94」「97―93」「98―92」。日本人ジャッジ3人は、竹迫を支持した。
「33歳の誕生日に地元の大阪で勝てた。運があった。感謝しかない、ボクシングの1回の負けは大きい。普通は負けた2か月後にこんなチャンスはもらえない」
 竹迫は、喜びを隠さなかったが、リングサイドで大声を出し続けていた英国から来たディキンソンの応援団とディキンソン陣営は判定結果に大激怒。スタッフがマッチルームの責任者に抗議する場面もあった。
 6戦無敗の英国から来た新鋭は竹迫が「体が分厚い」と警戒していたフィジカルを生かして序盤からガンガン前にきた。竹迫はインサイドからのアッパーやボディショットを食らい、ワンツーで対抗。激しい打撃戦の様相となった。竹迫は徹底して左ジャブを打った。
「相手は低く構えて、ジャブをおでこで受けてきた。ダメージを与えるのは難しいと思ったので、前重心で、痛さを感じさせてやろうと、相手の顔の、鼻や、頬や、顎と、いろんな場所に打ち分けた」
 2ラウンドには、竹迫の右でディキンソンが下がり、3ラウンドには左のボディショットがめりこんだ。パンチ力に頼り、大振りになる傾向のあった竹迫は、この日は、小さいパンチをコツコツと執拗に打ち続けた。だが、6ラウンドには左フックを浴びてバランスを崩す。パワーはディキンソンが上だったが「パンチはなかった」という。
 竹迫の序盤のボディ攻撃が布石となり、消耗戦となった7ラウンドからディキンソンは、根負けしたかのようにステップワークを使い、アウトボクシングに切り替え始めた。
 竹迫は「事前に映像で確認していて、あのスタイルで来るのもわかっていた。しかも下がりながらはボクシングができない」と、ここからは、竹迫が完全にペースを奪いポイントを重ねた。
「勝てたので次がある。ただ倒せたのにそこが悔しい」
 ただ1大会で10万ドル(約1580万円)を山分けするKO賞はゲットできなかった。
 5月11日に韓国でテイジ・プラタップ・シン(豪州)に1-2判定で敗れ王座から陥落した。専門家を交えてミーティングを開き、トレーニング、食事、生活面などのすべてを見直した。その一つが、SNSで有名人となっている妻のススメで、オリックスなどでも採用されているスリープトレーナーの協力を得て取り入れた睡眠の改善だ。睡眠時に腕時計型の特別な検査機を巻いて時間と質をチェック。体に取り入れた栄養素が外に逃げないことに留意し、疲労の回復にベストな睡眠を、時には、仮眠などを入れながらキープし、「朝起きた時のけだるさがまったくなくなった。今日もそうでした」との効果を得た。

竹迫が韓国で判定負けした前戦をプロモートした元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪氏も観戦に訪れ「微妙な判定だと思ったが竹迫のボディと手数を評価したのでしょう。途中、相手が竹迫のプレッシャーに耐えきれずに足を使って逃げた部分もジャッジにマイナスに映ったのかもしれません。前戦で負けた原因だった近い距離ではヒッティングポイントでパンチを当てられないという課題を克服していた。年齢なのか、試合間隔が狭いダメージの影響なのか、パワー不足が少し気になったが、素晴らしいファイトだった」と称えた。
 その竹迫の判定勝利を目の当たりにして心に火をつけたのがメインのリングに上がった国本だった。
「竹迫さんが勝ったのを見て、もう一回“よっしゃー”とスイッチが入った」
 3年前にプロ5戦目で竹迫の持つ日本王座に挑戦したが、1ラウンドにKO負けしている。可兒に勝てば、準決勝という最高の舞台でリベンジのリングに立てるのだから、気合が入ったのも無理はない。
「ウシ!ウシ!」と奇声を発しながら、3月に6回TKO勝利している可兒に1ラウンドからパンチを打ち込んでいく。可兒はガードを固めた亀状態で防戦一方。なんとかカウンターで反撃を試みるが、国本の迫力が圧倒した。4ラウンドに「なにげなく出した適当な右のアッパー」で、ぐらつかせてラッシュをかけた。仕留めきれなかったが、5ラウンドに再び猛攻。ロープを背負わせ「狙っていた」という右のショートパンチが的中したところでレフェリーがストップを宣告した。
 2人の勝者はファイトマネーの15万ドル(約2370万円)を手に入れ、さらにTKO勝利した国本には、KO賞として約525万円がプラスされた。約2895万円である。これは、軽量級での世界戦で世界王者が手にする金額に相当するもの。超破格だ。
 楽天チケットが投入した資金で実現したものだが、国本は「兄弟が多く片親。妹が大学に進学するのでその学費の足しにしたい」と語っていたが、枝川孝会長も、「チームのジャージを新調したい」と満面の笑顔だった。
 また竹迫も「強くなるにはお金がかかる。世界王者になるための自分への先行投資に賞金は使いたい」という話をしていた。
 そして準決勝のファイトマネーはさらにアップする。勝者が25万ドル(約3950万円)で、敗者が12万5000ドル(約1975万円)だ。
 10月に幕張メッセで予定されているその準決勝は、国本と竹迫の3年越しの再戦となった。国本が「一度負けているので、なんとしてもリベンジしたい」と言えば、竹迫も「過去は過去、次は次。前を向いて最高のパフォーマンスで次こそ倒す」と返した。
「国本選手は(僕に負けてから)負けていない。それは凄いこと。彼の体を見てもちゃんと努力しているのが伝わってきた」
 その言葉通り、竹迫に負けてから8連勝中の国本の成長度がカギを握ることになるだろう。
 そして勝者は、来年2月に予定されている決勝で、この日共にTKOで勝ち上がったコンウェイとマッケンナの勝者と優勝を争うことになる。世界ランカーのコンウェイが頭ひとつ抜けているように見えた。

優勝に照準を絞っている竹迫は、「コンウェイはスーパーミドル級くらいに体がでかいなと思った。ただバテやすく、単発が目立った。マッケンナは、チラホラと目が合う度に気合の入った眼差しを送ってくる。会見で侍スピリッツが好きだという話をしていたが、その通りのファイトをしていた」との印象を口にした。
 大和大学内にある会場の大和アリーナは、昨年開業した空調のよく効いたピカピカの施設。3つのスクリーンが設置され、モノトーンの照明にも凝っていて洒落た花道が作られた舞台は、国本が「DAZNのマークもあり海外風でテンションが上がった」というほど立派なものだった。
 欧米では、DAZNがライブ配信。試合後のリング上のフラッシュインタビューには通訳が付いて英語で訳された。英大手プロモート会社「マッチルーム」の初上陸にふさわしい空気感は作った。だが、悲しいかな、約3000人収容で設営準備された観客席は、3割程度の入りしかなかった。しかも、プロ興行ではありえないが、観客数も主催者側から発表されなかった。破格の賞金とのギャップがあまりにも激しかった。
 マッチルームや楽天チケットがどう評価したかわからないが、この日1日だけで見れば、興行的には失敗だろう。
 竹迫にガラガラだった会場について聞くと「せっかく大きな賞金を出してもらったので、なんとかチケットを自分でも売りたいと思っていたが、試合に集中したのであまりできなかった」と、自身で集客できなかったことを反省していた。
 しかも、配信全盛時代に国内配信&放送はなし。「カメラ撮影、動画撮影は自由です。SNSなどで、どんどん拡散して下さい」と異例の場内アナウンスが繰り返し流された。
 広報宣伝がほとんど行われていなかったという営業のミスもあるが、マッチルームが、セレクトした海外の5選手は、ほぼ無名。格闘技方式で、それぞれの選手のエピソードを掘り下げて紹介するような集客のための事前のプロモーションもなかった。
 会場にいた元世界王者の1人は「マッチルームも世界を狙えるような本物の世界ランカーは呼んでいなかった。第2試合の2人(マッケンナ対ジョバニー・エステラ)は8回戦レベルの選手だった」と厳しい意見を口にしていた。
 イベントの発足会見ではマッチルームのフランク・スミスCEOは、「日本の若いファイターを育てていきたい。未来の井上尚弥を発掘したい」とのコンセプトを口にしていたはずだが、若手発掘につながるようなアンダーカードも組まれなかった。10月の次戦に向けて多くの課題を突きつけられたマッチルームの日本初上陸イベントとなった。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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